リウマチ相談室のブログ~手のひら先生の独り言~

手のひら先生が鍼治療を通して思う、つれづれなるよしなしごとをお話します

学歴なくても月収30万円 その5

あくせく勉強して働いて、それでもリストラに怯えるサラリーマン諸君、寅さんならこんなセリフを言うかもしれません。

資格をと社会保険労務士をやっとの思いで取得しても、ほとんどお客の獲得はできません。

歯科医師でさえ夜逃げや廃業してると聞きます。

子供の頃寿司屋は潰れないと聞きましたが、いまや宅配すしや回転すしに押され、我が家の周りでもこの30年で3軒は廃業です。

このような時代に学歴無用で月収30万円の職業があったら、誰でも飛びつくでしょう。

以前このように書いたらやはり興味があるのか、時々読まれる方がいるようです。

自分で名人と言うだけあって大和屋のオヤジのところには、関東一円の彫刻刀の研ぎ以来がひっきりなしに来るようです。

息子も最近はかなり上達したようで、その後のクレームはないようです。

研ぎの教室を開設したらと勧めるのですが、職人というのは何かとケチ臭いもので、いざとなると金を貰っても教えたくないようです。

ちなみにネットで探したら、既に研ぎの教室は存在していました。

あとは営業のノウハウ次第で、この仕事の成否は決まるかもしれません。

最近は調理師でも包丁の研ぎを依頼するようですし、この仕事の未来は明るいかとも思いますが。

一方床屋は既に替刃式のカミソリになっているので、もし包丁もそのようになったらと息子は心配をしているようです。

数年前韓国手指鍼学会を訪れたとき、韓国は既に日本食ブームでした。

居酒屋風の店に行くと刺身が出てきました。鉈で切ったような切り口で、刺身の美味さが感じられません。

和食の味の決め手に包丁の切り口が上げられているのは、さもありなんとこのとき実感したのです。

今は手に指す鍼なのでほとんどしないのですが、体にさす鍼を学んでいたときは研ぎを極めようと思いました。

昭和初期辺りはそれほど感染症のことが騒がれなかったので、今のような使い捨て鍼はありませんでした。

名はり師になると、一本一本心を込めて作りました。鍼先を最後に研いで付けると、自分の舌に刺して出来を確かめたそうです。

私も研いで見たのですが、結局鍼を研ぐことは諦めました。

鍼先を研ぐ難しさもあるのですが、やはり感染症のことを考えると、努力が水の泡になってしまうからです。

しかし鍼灸師の醍醐味はステンレス鍼にあるのではなく、金や銀の鍼を使いこなすことにあるのではないかと、密かには思っていますが。

研ぎというのは奥深く、下は私のような素人研師から上は刀剣の研師までいます。

大和屋のオヤジに聞いた話ですが、有名な包丁問屋が全て研ぎに出す、そういう名人もいらっしゃるとのことです。

息子さんが最近教えを乞いに訪ねたそうですが、相手のレベルに応じて指導するそうです。ただし言葉は基本を抑えた上の、感覚的なものらしいです。

ま!名人とはそんなレベルかもしれません。

さて名人とは言えないまでも、なるべく速成の名人に近づく方法見つけました。

砥石です。

砥石も数千円から上は億の値が付くものまであります。

いま左手に力が弱くなっているので、思い切って「シャプトン」の砥石3枚組を購入しました。今風に言えばハイブリッド砥石とでも言いましょうか。2万円です。ちょっと高い!

まだ2回しか研いだことがないのですが、研ぎ上がりは素晴らしいです。

研ぎの極意は膝と腰の使い方にあるのですが、そんなもの糞くらえとでも言えるごとく、あっという間に仕上がってしまいます。

光にかざし仕上がりを目で確認し、人差し指と親指を滑らせて刃先の具合を感じる時は、精密機械を仕上げる職人のような気分になります。

最後は新聞紙を一枚一枚切って、刃先全体が滑らかに仕上がっているか確認します。

むかしお祭りに出ていた、インチキガマの油売りを思い出します。

最初は日本刀で紙を切っていきます。「さあお立会い、聞けば玉散る氷の刃、さあお立会い、1枚が2枚、2枚が4枚・・・」

そして腕を切って血を出してそこに油を塗って止血する、あの蝦蟇の油売りです。

切れの良い包丁を使うと、調理することが楽しくなります。

道具の進化で名人の域までより近くなった気をさせてくれます。

しかし最終的には感覚が勝負の世界なので、月30万の収入を得るためにはどこかで師匠を探し、その感覚を盗むことが必要になると思います。

ある面、鍼灸師の世界と同じだな。