前中日ドラゴンス監督 落合博光著「采配」を読んで
なぜ落合ドラゴンズは強いのか?
見ていたって、格別気をてらった戦法をとるでもなく勝ってしまう。どこに秘密があるのだろう。
戦力でもどこかのチームのように、欲しい欲しい病もなく現有勢力で勝てると断言した、就任1年目の判断はどこから来るのか?
選手の能力、潜在能力をどのようにして見切るのか?
知りたいと思いませんか。
私はずっと思っていました。
そして彼が野球をどの程度深く考えているのか知りたいと思い続けていました。
もう何年もサッカーに関心が向いていて、興味はなかった野球ですが落合野球には、常に惹かれていました。
これらの疑問がこれ1冊で氷解する思いです。
といっても選手指導のノウハウなどはここには書かれていません。
選手に何を言っている説いている、コーチとはどのようなコミュニケーションのとり方をしているなど、プロにとって知りたい物はありません。
しかし観客として知りたいこと、それはすべて書かれています。
知ってしまえば、なあ〜んだと言うことばかりですが、やはりねというところも一杯です。
一番うれしかったところは、彼が「野球」を文化として捉えていると語ったところです。「野球は日本文化」である。
アメリカのベースボール文化ではないと語るところは、彼の哲学が語られている重要なところです。
さらに野球哲学の基本として「勝つ」ことに重心を置くところは、最近見た映画「マネー・ボール」のアスレチックのビリー・ビーンGMにも通じるところがありここにもうなずけるところでした。
ビリー・ビーンの言葉「最後に勝たねば意味がない」でしたか。野球は勝つことがすべて、野球人の哲学は彼我の差はないのでしょう。
疑問その1 就任1年目なぜ現有勢力で優勝したのか?
疑問その2 なぜ荒木井端の二遊間コンビを使い続けるのか
疑問その3 なぜ選手は他球団から比べても怪我人が多くないのか
疑問その4 なぜ選手は監督の采配など悪口を言わないのか(8年もやっていればどこからか漏れてくるのが例ですが)
疑問その5 王さんなども超える実績を残すと、つい選手にアドバイスをしたくなるのを抑えられるのか
疑問その6 選手能力の見極めはどのようにしているのか
疑問その7 想像力の源はどこにあるのか
疑問その8 試合の見切り方、年間を通しての戦い方
疑問その9 新人選手がどうして育ってくるのか(ドラフト上位選手は必ず育てている印象がある)
疑問その10 野球場(その外でも)という戦場でなぜクールにいられるのか
一気に読んでしまいました。
昔広岡 野村 森 監督などが優勝すると、その後中小企業の社長などが、その著書を買い込んで読後感をのべていました。
この組織論を是非わが社も取り入れたいなどなど。
「違うだろ!」
野球という場の組織論であって、いまあなたのいる戦場の組織論ではないはずだ。
何事も知識を得ることは重要だが、むしろそれが参考と思えるなら、その時点で恥ずべき事としなければいけないと私は考えたことでした。
それはそれとして、この著書は落合博光の文化論であり野球哲学書として読みました。