リウマチ相談室のブログ~手のひら先生の独り言~

手のひら先生が鍼治療を通して思う、つれづれなるよしなしごとをお話します

下町ロケットと企業の特許戦略

 第145回2011年上半期の直木賞受賞作品です。

昨年に原作を読み、ここでWOWWOWが映画化作品のDVDを見ました。

ほぼ原作に忠実に再現していますが、神谷弁護士を女性にしたところが映画らしいところです。

でもこれが返って弁護士業界の問題(?)も浮き出しているようで、話に厚みをもたらしています。

弁護士業務が決してきれいごとではないのです。


日本の特許戦略は遅れていると言われています。

特に優秀な中小企業は経済力から、自ら発案したアイデアを特許にまでできなかった経緯があります。

ほんの少し前までは、特許の80%のアイデアは中小企業が考えたもので、親会社の社員が下請け会社で聞いたものを持ち帰り、特許申請をしてしまったものだと言われていました。


ところが経済環境の激変で従来の親子系列が崩れ、下請け会社も独立の道を模索するようになり、独自技術と特許に目覚め始めたのがつい最近なのです。

国の将来としても情報戦略として、この特許は国の将来を左右するといっても良いほど重要なものです。


むかし発明学会で個人の特許申請を広めることをしていました。そのおかげで個人の特許件数は日本が一位でした。

しかし個人発明家の発明は実用新案程度が多く、やはり世界で特許料を稼ぎ出すような発明は、企業の発明だけでした。


私は親が旋盤などを操っていたので、数学ができたら工業系に進んでいたかもしれません。

しかし物づくりは好きなので、鍼灸師になってニードルキーパーを発明し特許も取りました。

もう15年ほど前からのアイデアを、3年掛かりで製品の形にし、特許を取るまで9年かかりました。

文献も今ほど多くなく、特許で使う言葉や言い回しはなかなか理解に苦慮しました。


ここで商標登録申請を行なったのですが、申請から拒絶通知が届くまで、とてもスピーディになりました。

拒絶通知と言って、知らない方は驚かれるかもしれませんが、決して商標登録や特許申請が否定されたわけではなく、取得までの調整過程の手続きです。

特許というのは斬新なアイデアに対し認められる権利ではなく、他に類似するものがない新しいものに与えられる、独占所有権なのだと理解するのは始めは大変でした。

そもそも想像力自体がガストン・バシュラールの定義、既存のアイデアを歪める能力としたことから考えれば、それほど日常から離れたところに特許が存在するものではないことが理解できます。


この10年のうちに特許庁も大変な代わり様です。

ネットで検索できますし、様々な形で個人出願者の便宜を図ってくれています。

みなさんもアイデアが沸いたらすぐ形にして特許申請をしましょう。

と言っても経験からアドバイスしますが、一晩寝て考えるとそれほどのものではないと気がつくこともあります。

また商品化するのは資金を必要としますので、売れるか否かを考えることが最大の重要事項になります。


さて、映画の中では特許によって企業が守られる、そして特許戦略が重要であることが語られます。

なかで特許について神谷弁護士が語るところがありますが、これは観客にわかりやすく基本を説いたところです。

現実の世界では特許権はとても複雑で、インターネットの世界ではその複雑さは想像を絶するほど、微妙で込み入っているようです。


鍼灸の世界ではバイ・デジタル・オーリング・テストの特許が有名です。

本来医療関係については人類の福祉に寄与するものとして、治療方法や診断方法は特許が認められていません。

ところがクリントン政権時代に特許戦略の強化が図られ、これも3回目にして特許が認められたことがありました。


テレビで報道されているように、日本の名産地名をいとも簡単に中国では商標登録されています。

iPadも同じような目にあっています。


ネットでいとも簡単に商標登録できる中国などとは、グローバル基準で審査が行われている諸外国は、その戦略を考えなければならない時代に入っています。

強い政治力の発揮が期待されるところでしょうが、日本以外の国に期待するしかないのでしょうか。


映画に戻ると、やはり物作りは憧れる世界です。

日本はこの世界で勝負してきたもので、これからもここでしか生きられないはずです。

物作りを忘れてしまったソニーが見る影もなくなってしまっています。


オンリーワンのモノ作りの他に、揺るぎない価格戦略もまた必要です。

技術は韓国に負けない、価格で負けたんだという言い訳は過去のことのようです。

原点である物作りの技術は日本に一日の長がある上に、ラインに乗せたら日々劇的なコストパフォーマンスを図っていかないと、すぐ真似され追い越されてしまうのが過去の歴史です。

そう言う意味では企業の意思決定過程と速度もまた俎上に載せるべき問題でしょう。

しかしつくだ製作所の規模であるなら、風通しも良く意思決定も早く、これからも生き残れるでしょう。


大田区の中小企業をはじめとし、日本の産業ガンバレ!