リウマチ相談室のブログ~手のひら先生の独り言~

手のひら先生が鍼治療を通して思う、つれづれなるよしなしごとをお話します

李忠成・鄭大世 それでも、この道を選んだ 

古田清悟+姜成明 共著 光文社刊

 それぞれ日本代表、北朝鮮代表が冠されています。

韓国の鍼で治療している私には、いつからか彼らには関心がむいていました。


在日と言うレッテルが彼らにはいつも付き纏ってきたわけです。

この在日韓国人朝鮮人というのは、今現在でも根底に差別の代名詞になっています。

その差別をを乗り越えてなお彼らが情熱を注ぐサッカーを通し、その壁を乗り越えていく姿が眩しいくらいに描かれています。


私が住む東京都府中市は在日の彼らが多く住んでいて、小学校の同級生にもいました。

体の小さかった私を弟のように遊んでくれた彼らを、特別な存在と思ったことは一度もありませんでした。

そのような中ではこの差別について、深いところまで私自身の理解が及ぶかはわかりません。


さてこの本を読んでいると、確かに国籍変更の苦悩があったなど、彼らの心の底の底まで踏み込んで書き込んでいるわけでもない。

あくまでもサッカーをひたむきに追求する彼らの視点で取材しています。

そのことが逆に読み物として重くならないで、感動を覚える読み物になっています。


月並みな言葉に「政治とスポーツは別物」があるが、スポーツを行う者にとって無関係でいられるはずがない。

モスクワオリンピックを冷戦の影響で出場取りやめになった時が思い出されます。

その後の選手の人生は大きく変化せざるを得なかったからです。

個人的には絶頂期の瀬古利彦選手が、この期を逃したので生涯金メダルを取れなかったのが残念でした。

スポーツ至上主義とはいうものの、ワールドカップは国と国との戦争ですし、オリンピックは国の威信がかかった戦いです。


読み終わったあとに、この二人の活躍で日韓朝の関係が少しづつ解消されて行っているように感じたことは、とても嬉しいことでした。

北朝鮮との関係はまだのところがあるが、韓国とは「韓流ブーム」とも相まって、若い世代から相互理解が加速している思いです。


それにしてもスポーツで活躍するその効果、パワーというものは凄まじいですね。

アジアカップ対オーストラリア戦での李忠成選手が放ったボレーシュート、あれ一発で彼は日本のヒーローになってしまったのでした。

「目覚めたら有名になっていた」の文章ではないけれど、そんな劇的な変化だったようです。


これからの韓日の若者たちは、政治を乗り越えてスポーツから、サッカーから良い流れに乗りだしたのではないでしょうか。

そう期待ができると思える1冊になりました。


あと新たな発見がありました。それは「フォワードは育てるのではなく、探してくるものだ」という言葉が長い間疑問でした。

それが李忠成を知って、フォワードはフォワードとして自分を育てるのだ、完成するんだということが良く理解できました。

父親の強い助言で彼が真のフォワードに目覚める、そこのところでフォワードは自らが作り上げるものだ、ということが分かったのです。


これからは新しい目でドイツボーフムで活躍する鄭大世、イギリスサウザンプトンに移籍した李忠成の活躍に、より注目していくつもりです。


最近になく爽やかな興奮を覚えた一冊です。