探偵はバーにいる 東直己著
アズマ ナオミ と読ませるようなのだが「己」はミと読んだ記憶が無いのだが?
映画を見て原作を読んだのだが、すっかりこちらにも見せられて、シリーズを5冊も買い込んで読んでいます。
シリーズ最初の「探偵はバーにいる」でこれは映画の題名と重なるが、映画は2作目の「バーにかかってきた電話」を原作としている。
伝統的なハードボイルドの文章と決め付けて読んでいるのですが、気に入ったこんな場面がありました。
子供と格闘をする場面。子供といっても高校生ぐらいの年齢のチンピラです。
《俺は左足を上げ、ナイフと一緒に突進してくる右手を右に払った。そのまま左前に一歩踏み込む。ナイフが俺の腹の前を横に流れる。子供の右ひじが俺のミゾオチに優しく当たる。それを両手でつかんで後ろに放り投げた。状態が後ろについて前に泳ぐ。忠義な上体だ。踏み込んだ勢いを右ひざに込めて肋のあたりにぶち当てた。そのまま足を下ろさずに膝から下を跳ね上げ、足の甲で向こう側の脇腹を思い切り蹴った。》
いやー分析的だな!
もっとも大昔夢枕獏の格闘技小説にも、このような格闘技分析の場面はあったような記憶はある。
懐かしさもあるのだが、最近はこのような表現にあったことが無いので、少々感激してしまった次第です。
「おほ海の磯もとどろによする浪われてくだけてさけてちるかも」
源実朝の歌が頭に浮かんできてしまいました。
そういっても小説は小難しいわけでもなく、スピード感あるテンポで進んで行きます。
ここのところで読んだハードボイルド、ほとんど速読で読んでいました。
確か先生は「速読はビジネス書向けですよ」とおっしゃっていたのですが、ま!そんな味わうほどのことが無いものも多いので。
この文章は味があって、速読なんてもったいない。
心のどこかにこんな無頼な生活もしてみたかったのかも、あこがれているのかも知れないな。
北海道はまだ行ったことが無い。読んでいると行ってみたくなるような気がしてくる。
いいところのように思えてくるので不思議だ。
もし行ったなら何かもう何回も来たことがあるような感じがしてくる、そのような描写も見事だな。
我が鍼灸の母校はかの有名な歌舞伎町にあったのだが、ススキのは北海道の歌舞伎町のように表現されるような場所なのだろうか。
巻頭に札幌の架空の地図が載っているが、もっと読者が増えると本当に存在するのかと、錯覚する輩が出るだろうと面白がって読んでいる。
そのような魅力もあるシリーズです。