リウマチ相談室のブログ~手のひら先生の独り言~

手のひら先生が鍼治療を通して思う、つれづれなるよしなしごとをお話します

 近藤誠医師の「がん論文」で思うこと その7

文芸春秋1月号「抗がん剤は効かない」から、抗がん剤について論争が始まっています。

文芸春秋
http://www.bunshun.co.jp/

週刊文春で反論が掲載され、文芸春秋2月号では立花隆氏との対談が載りました。

今回は講談社週刊現代1月29日号に、飛び火したように論争が広がってきました。これを読むと近藤医師の主張していた点が、図らずも明らかにされたのです。

週刊現代
http://kodansha.cplaza.ne.jp/wgendai/

それにしても日本人と言うのは文化的にも民族としても、論争には向かないのではないかとも思う。幼いところが、端々の悪口誹謗として出てきてしまうのである。

ちょっとわき道にそれますが、私の行っている韓国の鍼、高麗手指鍼(コウライシュシシン)の本部、高麗手指学会へ行った時のことです。もう10年ぐらい前でしょうか。

当時学会が入居していたビルから、食事会へ出発することになりました。私たちを乗せてくれるのは、学会が発行している「月刊手指鍼」の記者です。

駐車場で待っていると彼がビルから出てきました。一緒にランニングシャツとステテコ姿のおじいさんも出てきて、二人は大声で言い争っています。

延々とそれが続くのです。両者ともまさに掴みかからんばかりでした。日本でならきっと殴り合いになっていたはずです。

2,30分もした後、やっと車に乗って目的地に出発することになりました。

車内で今の状況を質問すると、「あのおじいさんはビルの駐車場の管理人だそうです。学会は駐車場と契約しているので、彼は当然と思って駐車した。ところが彼が『お前の顔は見たことが無い。学会の関係者と言っても信用しない。だから駐車料金を払えと』言っていたそうです。」

お金を払った後は二人とも何事もなかったように、さっぱりとしていました。

初めての外国旅行に、外人の喧嘩とはこのようなものなのかと納得しました。もっとも韓国は儒教のお国、もし目上の人を殴ったりしたら、それこそ殺されかねません。

良く聞くことに、欧米人の論争はその時だけで、結論が出ればお互い元の友人に戻ると言うことです。わだかまりは全く残さないと言うことです。

それだけ歴史の荒波にもまれた文化は、論争は論争として徹底的に論理を通そうとし、そこに感情は押しはさまないことが出来るのでしょう。

週刊文春1月20日号の中でこのような文章があります。『・・・がん医療のあり方に対する批判など、近藤氏の批判など、近藤氏の主張には耳を傾けるべきところもあります。しかし、あの論文で近藤氏は自分の思い込みに都合のがいいように、エビデンスをあてはめているだけなのです。これは研究を始めたばかりのの初心者にありがちな誤りなのですが、おそらく一般の方にはわかりにくいでしょう。・・・』

確か近藤医師の年齢は私より1歳上なので、62か63歳です。1996年頃からマスコミに頻繁に出るようになったと思いますが、その前から乳がんの専門医として活躍されていると聞いています。

それが研究者として初心者と断じるのは、もう議論の最初から敗北をしているように見えます。冷静さを欠いて、単なる悪口になってしまいます。

さて週刊現代に戻りましょう。

国立がん研究センター東京病院・臨床開発センターの松村保広部長が言う。『近藤氏の論文には、明らかに間違っているところが多々あります。抗がん剤は多くの固形がんには効かない、寿命も延びないと主張していますが、短期の延命は認められています。』

抗がん剤の副作用で亡くなる人はいる。しかしそれだけで「抗がん剤が命を縮める。」とは言えない。むしろそう言う不幸なケースも正直に生存率のデータに組み込んで、有意に延命効果が認められた結果、(薬が)承認されている。』

抗がん剤は我々一般人が考えるような、延命効果は無さそうです。

次のような基準を持っている医師もいらっしゃるようです。

山王病院奥仲哲弥副院長は、「がんが根治したことを持って聞いたとするのであれば、抗がん剤は効かないと言える。しかし、10cmのがんが3cmになったら、これは効いたと言えると思います。『部分寛解』と呼んでいますが、がんのサイズが50%以下になったら効果ありとしています。」

また次のような考えの医師もいらっしゃいます。

大塚北口診療所腫瘍外来梅澤充医師はこう言います。『もちろん、個々のケースを見れば、抗がん剤を投与されてデータ状の平均余命より長生きした人も、それより早く亡くなった人もいるだろう。こう言うここの患者ではなく、「マス」でとらえようとばかりしているのが、日本の抗がん剤治療の最大の問題点だ。・・・実は一人一人に抗がん剤がどのように出るかかは、投与してみないと分からない。いわばばくちと同じです。』

中々抗がん剤と言うのは難しい薬になてきました。その効果や副作用とも、飲んでみて初めて効果が解ることになるようです。そして医師は個々のケースを見ながら、抗がん剤を組み合わせ調整していくことで8割以上の癌はコントロール出来ると言うのです。

興味ある文章があるのでここに記します。国立がん研究センター編の『がん診療レジデントマニュアル』です。

A群(治療が期待できるもの。急性骨髄性白血病急性リンパ性白血病など、) そう言えば俳優の渡辺謙さんも白血病で、元気で活躍されていましたね。

渡辺謙ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A1%E8%BE%BA%E8%AC%99

B群(延命が期待できるもの。乳がん、大腸がん、卵巣がんなど)

C群(症状緩和が期待できるもの。食道がん、肝がん、胃がんなど)

D群(期待が小さいもの。甲状腺がんなど)

まとめとして本誌は「現状では、効果のほどはあくまで人それぞれ。今後は、ここの患者に合わせた細やかなオーダーメード的な治療ができるかどうかが、重要になりそうだ。」と締めくくっています。

ここまで読んで来て分かったことは、近藤医師の言っていることは間違いなどではなく、傾聴に値するものであることである。

そして「抗がん剤」は一部のがん以外は、延命効果が無いことが解りました。それは多くの医師が認めていると言うことが解りました。

現在の治療としては、個々人に重篤な副作用を出さないようにし、寛解や短期であっても延命を目指すまでである。と言うことでしょうか。