鍼技術の組み合わせ
どのような鍼治療でも、その技術だけで解決する難問はありません。
とはいえ一つの技術を突き詰めた上でのことは当然ですが。
鍼灸を使い始めたころは特にそうなのではないでしょうか。
お腹のコリを取ろうとするのだが、鍼だけでは問題が解決できない時がある。
そのような時に按摩の技術に自信があると、ついそれを使ってしまいます。
結局鍼の技術は進歩して行かないこととなります。
高麗手指鍼を習い始めたころ、金成万先生が仰ていたことがあります。「高麗手指鍼を使う時は、この鍼だけにしなさい。最初から体鍼(体に刺す鍼を韓国ではこう表現しています)を併用してしまうと、どちらが効いていたのか分からなくなります。」
使い始めたころ友人と良く話していたのは「この鍼は内臓疾患には効くが、痛みなどに効かせるのは難しいね」
いまはこのようなことはないのですが、習い始めた当初はこのようなことがありました。
つい体鍼を使う誘惑に負けてしまいそうになることが多々ありました。それを乗り越え技術が向上すれば、このようなことは無くなりました。
しかし難病と言われるような疾患については、単一の鍼だけでの問題解決はできません。
網膜色素変性症と言う難病があります。失明に至る病気です。
この病気を1980年代ごろ、中国に行って完治手前まで治った方が居ました。
その本を読むと、中国鍼は持病の糖尿病を治すものでした。後は漢方薬、薬膳料理、太極拳、推拿と呼ばれるマッサージを繰り返し、約8カ月ほどかかったそうです。
中国鍼だけではそれだけの効果は引き出せなかったということです。
高麗手指鍼はまだ発展途上の鍼技術です。これだけで問題解決はできない場合、どのようなものを組み合わせたら良いのか。
いま研究しながら使用しているのは、フランスの医師、ポール・ノジェ博士が発明した「耳鍼」です。
不幸なことに日本では「ダイエット」の誇大宣伝がされたため、その本来の力が認められていなと思われます。
後追いで開発された中国式の「耳鍼」もあります。こちらは実践的な処方が強いように思います。ツボの運用については、ノジェ式が参考文献が少ないため、中国式の方に一日の長があります。
高麗手指鍼との併用を考えると、理論の発展から見てノジェ式の方が取り入れやすい、また補完的使い方も出来ます。
ノジェ式は欧米で発展しているようで、文献も英語の物が多い。
今少し英語を勉強しておいたなら、もっと簡単に彼らの研究を取り入れられるのではないかと思います。
でもまだ彼らが考え付いていないような面から、この研究を進める余地は十分にあるはずです。
高麗手指鍼の治療も「手のひら先生」と冠を付けるほどになったので、これをさらに完成すべく他の技術を取り入れようと考えているわけです