リウマチ相談室のブログ~手のひら先生の独り言~

手のひら先生が鍼治療を通して思う、つれづれなるよしなしごとをお話します

患者さんが治療家に

網膜色素変性症という難病をご存知でしょうか。国指定の難病です。発病は様々で、多くは働き盛りの40歳代に発見されることが多いようです。網膜の視神経が侵されて行き、最終的には失明にいたるものです。ところがその進行が遅い方もいて、なおかつ死滅していくところが中心を外れているので、気がつくまでは視界がおかしくなっていると気がつかないのです。夜道が暗くてあるきずらい、地下道のような薄くらいところを歩いていると、突然横から人が現れてぶつかる。これらが度重なっても自分では目が変だと言う実感はない様なのです。視野狭窄90パーセントと言う方も見えたことがあります。
この治療については今のところ決定的な代替療法も見当たらないようです。最近手に入れた本があります。「暗闇からの生還」牟田口 裕之著です。およそ20年前自ら求めて中国に渡って、この網膜色素変性症を治したという方です。一時はブームになり多くの方が海を渡ったそうですが、天安門事件を境にその治療が途絶え、その後目立った成果は聞かれなくなりました。
私の患者さんにこの病気の方がいます。その中でお二人が盲学校を受験し、お一人は資格を取ってあんまマッサージ師兼鍼灸師として活躍されています。お一人は今1年生です。前者は発病して将来を考えはじめた前後から治療を始め、入学前後に一度視野が回復し完治に至った方です。盲学校と言うのは、受験まで猛勉強を強いられるので、少し見えていた生徒も卒業までに完全に失明する、過酷なところです。卒業し少し症状が戻って治療に来られていたのですが、現在は見えていません。安定しているのでしょう。
もう一人の方は進行が止まった状態を維持されています。定年前後から来られていて、何故盲学校でマッサージ師の道を進むように考えたのか聞いたことはないのですが、少なからず私が影響を与えているかもしれません。
彼らに聞いた話ですが、盲学校に入ってきている方のほとんどがこの病気だそうです。生徒もそうなら先生も同じ病気です。死に至る病ではないにしても、一度は健常者として生活し、家庭も持ち人生一番華やかなときに突然光を失うと言うのは、これも筆舌に尽くしがたいものがあります。
先ほどの「暗闇からの生還」を読むと、中国ではどのような治療を行っているかと言うと、まず中国鍼、これも特別なツボを使うのではなく、日本でも常時使うつぼで目新しいものはありません。漢方薬、日本で使うような量ではなく、1リットルとか半端な量じゃないようです。薬膳料理、なるべく酵素が生きているまま食べると言うことで、中には生煮えの蛙やすっぽんの料理も出てきたそうです。しかしその他の料理は格別なものはなく、身体に良さそうな食時になっています。推拿、中国式のマッサージです。マッサージ自体がこの病気に大きな役割を果たせるわけはなく、血行を促すために何でもやると言うことです。毎日が東洋医学のもと、ひとつのチームが統一して動き、患者に接することによって、病気を治す体制が整っている結果が、視力の回復をもたらしたのだと思います。
これを検証すると、網膜色素変性症を完治させるためには、単一の技術だけでは効果が出ない。毎日治療を行う。と言う結論が見出せるのではないでしょうか。特に鍼に関して言えば、既存の鍼だけでは効果は出せないと言うことです。中国鍼と言っても日本の伝統的なものとそれほど違っているツボを使っているわけではない。もしこれが効いているようなら、先輩鍼灸師がすでに試され効果を出されているはずです。

私が難病といわれる病気を考えるとき、例えばリウマチや糖尿病癌などは、既存の鍼療法での検証をしその効果が薄い場合に、それ以外の発想をしなければこの壁を打破できないと考えることにしています。まず高麗手指鍼で効果が出難いと考え、それに日本の鍼を加えました。一時効果が出たが次の患者には効果的でなかった時は、伝統的な鍼を使って目に効くというツボに刺しました。それでも効果が遅いと考え、フランス人P.ノジェの耳鍼を使いました。さて次は、ベットを使って気を脳に送り、その刺激で身体の重心を整えることを行っています。どうやら進行ストップと言うところまでは来ていますが、まだその先のステップを模索しているところです。
さてこれをガストン・」バシュラールの言う「想像力」と言うところから見ると、まったくこの定義には到達していない悔しさがあります。「既存のイメージを少し歪めて提示する能力を想像力と定義しています」が、いま私が想像力を発揮しているのは、高麗手指鍼の域内にとどまっています。後は既存のイメージをただ組み合わせているだけです。悔しいですけれど。
鍼灸の醍醐味のひとつに、この想像力の発揮できる分野であることと、それが無限大に広がりがあるということです。
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